オーダーメイト 21



『理想の友達、作りませんか?』

 そんな胡散臭いメールが私――佐々木 野乃花の元に届いたのは、いつもの様に学校をボッチで過ごした夜の事だった。
 私は友達がいない。いや、出来ないんじゃない。作らないだけだ。
 だからこんなメールなんて気にする必要はない。
 だってあえて友達作らないだけだし。友達いらないよ?いらないったら。


『この度、弊社ではお客様に最も適した御友人を提供するサービスを始めました。
 当サービスをご利用いただけると、お客様の理想とする御友人が明日から共に過ごしていただけるのです。
 弊社独自のシステムで、貴方だけの御友人が手に入ります!
 
 貴方の欲しい御友人はどのような方ですか?
 
 憧れのあの人ですか?
 同じクラスのあの方ですか?
 それとも、想像上の人物ですか?
 漫画やアニメの登場人物ですか?
 
 どのような理想も、叶えます!
 
 御希望の際は、このメールへ御希望の友人を御入力の上、御返信下さい。
(空白の場合、お客さまの状況に合わせてこちらでご用意させて頂きます)』


 ほら、うさんくさい。
 こんなのに騙される奴なんていないよ。


『大道寺美由紀さんを私だけの友人にできるもんならしてみろ』

 どうせ詐欺なんだから、無理難題を送ってやれ。
 
 ちなみに大道寺美由紀さんは学校でも一番の美人さんで有名である。
 
 ただし、近くの御嬢様学校の。
 
 私の学校にいないし、家庭環境も違うので接点も殆どない。
 いや、ないことはないんだけど。あるんだけど、多分彼女は覚えてない。

 私に友達がいないのは、どうしても彼女と比較してしまう部分があるからかもしれない。
 私が彼女に抱く感情は、友情というより恋愛感情の方が近いかもしれない。

 まあ、どちらにせよ叶うわけがない願いなんだけどナー。

 馬鹿らしい、寝よう。
 
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「はい、お仕事ですよー」
「ういーっす」
 案外早く次のお仕事がやってきた。
 もうちょいかかると思ったんだがなぁ。
「まさかこんなに早く次が来るとは思いもしませんでしたわ……」
「あたしもそう思ってたけど、そういうこと言っちゃダメ」
「また二年くらい放置されるものかと……」
「ダメ!本当になっちゃうかもしれないからダメ!」
 さすが四年ぶりの人。発言がネガティブである。
 というか紅先輩までメタ発言しないでください。ツッコミが俺だけになってしまいます。
「まあ冗談はさておき、依頼内容を噛み砕いて説明すると、『高嶺の花の御嬢様を独占したい。できるもんならやってみやがれこの○△■どもめ』であるわけですが」
「そこまで酷い事書いてねえよ」
「噛み砕くどころか粉砕して引き伸ばしましたわこのフリーダム社長」
「誰が准将専用ガンダミュですかね!」
 あ、社長が噛んだ。てか誰も准将殿の話はしていない。
「まあ、それはさておき、今回は……」
「わたくしがメインですわね。血液足りるかしら……」
 え、一人で関係者全員洗脳する気っすか?死にますよ?老衰ないだけであなた普通に死ぬタイプですよね?
「いやメインがミアなのは間違いないんだけど、一人じゃ一ヶ月くらいかかるよ?」
「社長、時間の問題じゃねえから」
「一ヶ月も出血し放題とかご褒美じゃないですか!」
「はい、全員で行きますよー」
「了解―」
「えっ」
 満場一致で総力戦となりました。

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 みなさま、お久しぶりでございます。紅ミアこと、ミア・クリムゾンですわ。お初の方は以後お見知りおきを。
 今回のターゲットである大道寺美由紀さんとやらは、どうやらこの辺りでの名士の娘さんの模様。
 依頼者である野乃花嬢が何故この御嬢様と縁を結びたいのかは存じ上げませんが、依頼とあらば何でもするのがわたくし達ですわ。見事成し遂げて見せましょう。
 ええ、特に女の子同士の友情はわたくし達もスポンサーのアレも大好物ですもの。勿論行き過ぎるくらいで丁度いいのですけれど。
 
 さて、大道寺家はこの辺りでは絵に描いたようなお金持ちのようです。
 家の周りには黒服サングラスのガードマンがいて、メイド服を着た凄腕ボディーガードがいるという、どこの漫画だよというお家ですわ。
 ちなみにこういうお家は結構ありますのよ、この世界。色々都合のいいことです。
 結構厳重な警備が敷かれていますが……まあ、関係ありませんわね。

 さて、ここでわたくしの能力を紹介しましょう。
 わたくしの奇跡(魔法的な何か)は『洗脳』。他人を操ることにかけてはそれなりに自信がありますわ。
 とりあえずガードマンやボディーガードの皆様に対しては認識阻害系の簡単なものをばら撒きましょう。血を使うまでもありません。というかわたくし、男は要りません。
 あっさりと内部に侵入しました。可愛いメイドさんいないかしら……っと、いけません。目的を見失ってしまうところでした。お持ち帰りは最後にしないと。
 さて、お嬢様はどこですかねぇ。適当な部屋に入ってみましょうか。
「……」
「……」
 わたくしの目の前には一人の女の子がおります。
 すらりとしたモデル体型で、長い栗色の髪が特徴的ですわ。顔立ちから外国の血が入っているようにも見えますわ。
 メイド服を着ていないのでメイドさんではありません。
 大道寺家において、この年頃の少女は一人しかいません。
「えと……大道寺……美由紀……さん?」
「は、はい。あ、あの……貴女は?」
 美由紀さんは……窓に脚をかけ、外に出ようとしていました。
 大きなカバンを抱えた彼女はこちらを見て、困惑した表情をしていました。わたくしも同じような表情をしていたことでしょう。
 なにせ、このような事体は流石に想定外ですわ。
 ……これは家出か。家出なのか。
「……うわぁ。どうしましょう、この状況」
 ええ、まったく。
 とりあえずは、彼女から情報収集でしょうかね。
 ……まったく、わたくしの『花染め』を使える機会だと思いましたのに。
 染め上げるのは、後回しにしましょう。まずは事情を聴かないと。
 まったく、こういうのは苦手ですのに。

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 あのことであったのは、5さいのころでした。
 あのころのわたしは、おとこまさりで……いえ、じぶんのことをおとこのこだとおもっていました。
 まいにちのように元気に駆け回っていた「ぼく」は、そのひもみんなとあそぼうとしていました。
 でも、そのひにかぎってはみんないそがしくて、けっきょくぼくはひとりでこうえんにきたのです。
 そして、かのじょにであいました。
 ひとりぼっちでさみしうに、ぶらんこですわっていたかのじょにてをさしだし、いいました。
「いっしょに、あそぼう?」
 しばらくぼくのてをみてから、こちらをみたおんなのこのえがおは、とてもかわいらしく、ぼくのこころにっきざまれました。

 そこで、目が覚めた。
 私にとっての大事な思い出。多分、これが初恋なんだと思う。
 そしてこれこそが、私が足を踏み外した原因。
 自分のこの想いが分不相応であることを知るのは数年後。
 身分の差と同性である事。
 それを理解しても諦めきれない自分。なんとも見苦しい事だろうか。
 この想いは隠し続けなくてはならない。
 美由紀さんがこの想いを知ったらどう思うだろうか。周りからはなにを思われてもいいが、彼女にだけは嫌われたくない。
 だから、隠す。むこうは私の事なんて覚えていないだろうけど、想われいること自体が迷惑な場合だってあるのだ。
 バレるわけにはいかない。彼女の為にも、私の為にも。

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 少し、時間を遡りますわ。
「……というわけです」
 洗脳術を駆使して美由紀さんから色々聞きだしました。

 まあ、ありきたりな話でしたわ。
 子供のころに出会った少年への初恋が忘れられないというよくあるお話。
 ただ、その相手が実は女の子で、しかも身分の差から結ばれる可能性はゼロ。
 しかも先日のパーティーで許嫁を紹介されたうえ、その性格は傲慢でとてもじゃないが付き合いきれないそうで。
 このままでは彼女と再会することはおろか、結婚生活も息苦しいものになる。
 断ろうにも、先方の方が立場が強く、此方が拒否することはまずできない。

 そこで彼女は考えました。
 そうだ、家出しよう、と。
 家がどうなろうと、自分にはどうでもいいのだから。

 こんなところですね。

 ふむふむ……政略結婚ですか。まだこんなことするんですのねお金持ちは。
 ちょっと時代遅れな感じもしますが……家の格式とかそういったモノを守るには必要なんでしょうねぇ。
 わたくしにはちょっとわかりかねますが。こんな喋り方ですけど、庶民の出ですのでー。
 さてさて困りましたわね。
 美由紀さんと野乃花さんを友人関係にするのに、いくつかの問題があります。

1.身分の格差がある。単純に二人の関係を繋ぐだけでは簡単に断ち切られてしまう。
2.釣り合う立場に合わせる場合、どちらに合わせるべきか。
3.仮に野乃花の方を格式高い家の子にしたとして、許嫁が邪魔。
4.逆に美由紀の方を一般家庭に移した場合、大道寺家の後継者がいなくなってしまう(一人っ子の為)。
  それなりに社会的立場がある為、そのまま変えてしまうと、ティアの力を使っても矛盾が生じてしまう可能性がある。
5.そもそも生活レベルを下げて、美由紀が耐えられるかどうか。

 これはティアだけに任すわけにも、わたくしだけでやるわけにもいきません。
 共同作業が必要ですわね。
 
 ……いい響きですわ、共同作業。
 


「というわけで、合流ですわ」
「うんまあ、そもそも今回は総力戦だと何回言えば分るのかなキミは?」
「さて、まずはティア、美由紀さんの『代わり』を調達しましょう」
「うん、人の話は聞こうよ、ねえ?」
「社長、言うだけ無駄だと思う」
 今回は、野乃花さんの立場をお金持ちにするのではなく、美由紀さんを庶民にするのが正解でしょう。
 ティアの能力は強力ですが、使いすぎると世界のバランスを崩してしまいます。そうなってしまうと、怖い青髪やスポンサーのアレに叱られてしまいます。特に青髪は決して容赦などしてくれません。恐ろしい。
 仮に野乃花さんを美由紀さんと釣り合う立場へ変えると、許嫁が邪魔をすることでしょう。
 彼女たちが求める絆は、ただの友情ではないのです。
 いつものわたくし達が身勝手に繋ぐものではない、彼女たち自身が望む関係。そして、そこに至る為の道。
 ならば今回は、それを紡ぐお手伝いをいたしましょう。
 誰も不幸にせず、誰もが満足する結果をお見せしましょう。

 とりあえずまず必要なのは、『身代わり』ですわ。
 これを一つ用意するだけで、問題の大部分は解決します。
「で、ちょうどいい方を連れてきましたわ」
「いや、見つけたの俺ですよ?『偶然』ですけど」
 わたくしが連れてきたのは、一人の青年。
 肥満気味で、ぼさぼさの髪とよれよれの服。黒縁眼鏡にニキビ顔。
 何日もお風呂に入っていないのか、ちょっと臭う。
「引篭もりで親の脛っかじり。こいつと交換なら、こいつの家族も負担が減ると思うぞ」
「お、おい、なんだよあんたら!」
 そう言いながらも、男は怯えていた。
「ああうん、君を無理矢理社会復帰させるお仕事を自主的にこなすことにした」
「なに勝手な事を言ってんだよ!早く帰らせろ!『ちびっこ忍者シロガネちゃん』が始まっちゃうだろ!」
 深夜アニメですねわかります。
「ふざけてんなよ!こんなの犯罪じゃねえか!」
 うんそうだね。訴えられる事はありえないけれどね。
「さあ、ティア。お願いしますわ」
「……『不摂生な青年よりも、清潔な御嬢様の方が好みです』」

 そのティアの言葉に合わせて、青年の姿が変化していきます。
 その身体はぐんぐん縮んでいきます。学生としては小柄といえるくらいのサイズです。一見すると子供のようにも見えるかもしれません、
 脂肪に包まれた肉体は細くしなやかに変わり、手や足が小さくなりました。
 腰は括れていき、逆に胸と尻は膨らんでいきます。小柄な体に不釣り合いな大きな胸は、服のボタンを弾き飛ばしました。
 顔は少しずつ柔和になっていき、やがて女性の顔にしか見えなくなりました。その顔つきは、どこか日本人離れしたところが見受けられます。
「え、なにこれ!?」
 声も高く変わっていますね。
 髪はぐんぐん伸びていき、肩に差し掛かる辺りで勢いが収まっていき、色が栗色に変わります。
 その姿は、どこか美由紀さんに似ているような気がしました。男としての面影は、どこにも残っていません。
「お。女の子になってる!ど、どうしてくれるのよ!いい加減に――」
「『自己主張が激しいのは頂けない。からっぽになっちゃえ』」


「『存在否定』、完了」
 ティアが使ったのは『存在否定』です。
 ティアが否定した存在は、ティアが求める姿に変わるという強力な奇跡です。
 かつてはコントロールすることができず、自分の姿すら変えてしまったり、望まぬまま姉を増やしてしまったりしてしまったこともあったのですが、能力への理解を深める事で、それなりに自在に操ることをできるようになったのです。
 もっとも、うっかり発動してしまう事はまだまだ起こりうるので、わたくしと海彦以外は要注意なんですけれども。

 出来上がった少女は虚空を見つめ、何も語りません。心も魂も、真っ白に変えてしまったようですね。
「性格の調整はわたくしが行うとしましょう」
「そうだね。ミアの方がしっかりと根付けさせる事ができるしね」
 ティアの能力だと必要な要素をすべて書き換えていく必要があり、非常に大変です。ここはわたくしの出番でしょう。
 わたくしは指先を傷付け出血させると、青年だった少女の頭上に手をかざします。
 すると、いつものように、そこに『白い花』が現れます。
 一滴一滴垂らしていき、白い花を赤く染め上げていきます。
 無垢な心を汚していく。
 先ほど見た、美由紀さんの心に近いものへと塗り替えていきます。
 ただし、完全には一致させません。傲慢な許嫁を大きな母性で包み込み、優しき心で導いていく存在へ。
 記憶も経験も、魂すら染め上げるのがわたくしの奇跡、『花染め』なのです。

「……もうしばらくかかりそうなので、美由紀さんをこの子の場所へ連れていってあげてください」
 戸籍の交換は、ティアの領域です。『存在証明』なら簡単にできるでしょう。
「了解。変態的な要素入れちゃだめよ?」
「わかってますって」
 未来の旦那様を満足させられるように、その手の知識は色々仕込みたかったのですけれど……まあ、自分で勉強してもらいましょう。えっちなことには興味津々です、ってね。
 あ、ついでに許嫁の方も誠実な男にしておきましょう。居場所はわかっていますから問題ありません。
 さて、どうなるでしょうかね?

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 ……あれ、何を考えていたっけ。
 あ、そうだった。美由紀の事だった。
 
 私の唯一の友人である美由紀。
 小さな頃に一緒に遊んで以来、ずっと一緒の友達だ。
 あの頃私は、自分は男の子のつもりでいた。
 近所の男の子に混ざって、外を駆けまわり、お母さん達に心配をかけてたっけ。
 美由紀はその後ろをずっとついてきてたっけ。
 いつも笑顔を絶やさない、とても可愛い子だった。
 そんな彼女が大好きで、私はずっと彼女に恋している。
 ……そういう関係になれたら嬉しいけど、難しいよね。女の子同士だし。
「野乃花〜、学校へ行きますよ〜」
 あ、もうそんな時間か。
 身だしなみを整え、外へ出る。
「お待たせ、美由紀!」
「……野乃花、リボン斜めになってますよ」
 そう言いながら美由紀は私のリボンを直してくれる。
「……よし。もう、しっかりしてくださいよ?」
「は〜い」
 そう言いながら私は野乃花の手を握る。
「もう、調子がいいんだから」
 苦笑しながらも指を絡めるように私の手を握り返してくれる。
 いつもの様に寄り添うように、二人で歩きだす。

 ……いつまでも、こうしていられたらいいな。
 美由紀の温もりを感じながら、私はそんな風に思った。
 
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・おまけ、数年後の御嬢様

「旦那様、今日もお疲れ様です」
 わたしは服を脱ぎ、旦那様へと口付けをします。
「ん……んちゅっ……ぬっ……んん……」
 舌を絡め、口付けをする瞬間が大好きです。
 えっちな事自体も大好きですが、私は旦那様の顔が間近で見れるキスは別格です。
 キスをしながらも、旦那様はわたしの胸やお尻を触ってきます。
 優しく抱きしめるように、わたしの身体を撫でまわしてきます。
 旦那様のモノが硬くなっていくのを感じます。
 わたしはキスをやめ、旦那様のモノを口で奉仕します。
「んっ……んぐ……ぬ…にゅ……」
 舌で舐めます。付け根から先端まで。
 絡め、咥え、刺激を与えていくと、だんだんと旦那様が昂っていくのが感じられます。
 そして――
ぴゅるるるぅぅっっ!!
 白く濁った子種が、わたしの顔に発射されました。
 わたしの顔も、髪の毛も。旦那様の精液で彩られています。
 ……ちょっと、勿体ないかも。出るのがわかっていたんだから、咥えて飲んでしまえばよかったかな?
 でも大丈夫。
 旦那様のは、まだ硬いです。口の中には今度出してもらいましょう。

 ゆっくりと、旦那様はわたしの膣内に入ってきます。
「んっ……」
 旦那様のカタチを、わたし自身で確かめます。
 最初はわたしを気遣ってか、ゆっくりと。やがてだんだんと早く、力強く。
「あっ…やっ…いっ……あぁん!」
 旦那様が動くたび、わたしの口から、自然と声が漏れてしまいます。
「ひゃっ…あ……いぃ……いいのぉ……」
 旦那様の首に手を回し、離れないよう必死にしがみつきます。
 抱いてもらいながら、抱きしめるのも好きです。旦那様の大きさが、全身で理解できますから。
「あ……も、もうっ……」
 旦那様ももう限界みたい。
 だったら。
「い、いっしょにっ……あぁんっ!」
 激しい動きに翻弄されながら昂っていく身体。
「あっ……ああっ……ああぁぁぁっ!」
 旦那様の放出と同時に、わたしも絶頂を迎えました

 わたしは幸せ者です。
 こんなにも愛してくれる旦那様が隣にいてくれるのだから。
 。
 時折、何かが間違っている気がするけど、旦那様がいるから平気です。
 きっとなにがあっても、旦那様はわたしを愛してくれるはずですから。

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おまけ2:ちょっと未来の二人

 ベッドに横たわる私に覆い被さる美由紀。
「み、みゆき?」
「ののかぁ……」
 私を見下ろす美由紀は、息遣いが荒く、顔を赤らめていて、淫らで、美しかった。
 なぜ、こんなことになったのだろう。
 今日はいつもの様に学校へ行って、退屈な授業をなんとか凌いで、いつも通り二人で帰ってきて、今日は誰もいないから泊まっていったら?って勧めて……。
 気が付いたら、押し倒されてた。
 ……わけがわからない。
 わからないけど。
「ののかぁ……、もう、わたし、我慢できないの……」
「えっ……」
「ずっと、ずっと我慢してたの。ずっと遠くから見てきて……」
 美由紀のいう事がよくわからない。私達は、ずっと近くにいたのに。
「こんなに近くに、ののかがいるなんて……がまん、しようとおもったのに……」
 美由紀の顔は、すこしずつ近づいてくる。
 美由紀が何を言っているのかは理解できない。理解できないけど。

 期待、してもいいんだよね?夢じゃ、ないよね?
「……いいよね?」
 尋ねる美由紀に、私は唇を重ね、答えた。

「ん……んっ……」
 互いの唇を求め合う。
 初めてのキスなのに、えっちぃ。
 キスをしながら、美由紀は私の制服を脱がしてくる。
 スカートのホックをはずし、ファスナーを下ろす。リボンをほどき、ブラウスのボタンを外していく。
 私も同じように、美由紀の制服を脱がしていく。
 下着姿で、互いを抱きしめあいながら、互いの唇を求め合う。
 唇を合わせるだけじゃ、足りない。
 どちらからともなく、互いの舌を絡め会う濃厚なキスに変わっていた。
 キスをしながら、下着も脱がしていく。
 美由紀の胸。私よりおっきくて、羨ましい。
 揉んでみる。柔らかい。
 ……おっきいのって、こんな感じなんだ。
 みゆきは私のお尻を撫でまわしている。
 指先でショーツの淵をなぞるように這わせたり、弾力を確かめるように、ぷにぷにとつついたりしてくる。
 とてもくすぐったくって、気持ちよかった。
 なんでだろう。美由紀に触られるのがうれしい。
 美由紀に触られているだけでとても気持ち良くて、夜に一人でスるよりも昂ってくる。
 美由紀の指が、私のショーツに侵入してくる。
 私の女の子たる溝へ指が触れる。
「んっ……濡れてるね……」
「ばかっ……」
 美由紀の指が私の大事な場所を弄る。
「あっ……ゃ……ぁ……」
「ののか、かわいい……」
 きもちいい。
 ひとりでするより、ずっとずっと。
 美由紀が、してくれるから。
 互いの鼓動すら聞こえそうなくらい、近くに美由紀がいて、その体温も息遣いも、今は私が独り占めしている。
 そして私の全てを、美由紀は感じてくれている。
 それが嬉しくて、恥ずかしくて。
「あっ……だめ、そこっ……」
「ののか、もっと、恥ずかしそうな顔、見せて?えっちなこえ、きかせて?」
 耳元でそう囁く美由紀の声も、とてもえっちな感じがした。
 だめ。そんなえっちな声で耳元で聞かされたら、もう、もっとしてもらいたくなっちゃう。
「いいんだよ、我慢しなくても」
 そんな私の考えを見透かしているかのように、さらに囁かれる。
 耳にかかる吐息。そんなことにすら、今の私は快楽を感じている。
 まるで身体が全部、性感帯になったみたいだった。
「みゆきぃ、みゆきぃっ……あぁんっ!」
「うん、ののかぁ。ののかぁ!」
 もう、互いしか見えない。
 互いしか感じない。
 溶け合うような感触もやがて終わりが見えてくる。
 湧き上がる快楽の波は、その頂きまでやってきた。
「ぁっ……ぁぁっ……あぁぁぁぁっ!!!」
 のけぞるように身体が震えながら、私の身体は絶頂を迎えたのだった。



「……ミアさんや。二人に何か仕込んだかね?」
「野乃花さんの方に、美由紀さん限定で全身性感帯になるようにしましたわ」
「……なにやってんの!?てかいつ仕込んだの!?」
「ひ・み・つ♪」



蛇足的登場人物紹介


瀬尾ティア
 みんな大好き瀬尾さん。
 好きな食べ物は「女の子」
 食べるの意味が違う。


紅ミア
 出血系御嬢様風庶民。
 好きな食べ物は「激辛カレー」
 ただし辛い物に対する耐性は一切ない。


青川海彦
 何もしてないように見えるけど実は色々裏方をやってる。
 好きな食べ物は「彼女の手料理」。
 何故昔の僕は、姉一人妹二人彼女持ちという勝ち組設定をこいつに与えたのだろうか。謎。



最近にしてはえちぃシーン頑張ったお話。
そして友情縛りだとこれ以上話が浮かばないという罠。


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