かのじょといっしょ



 ある日、俺は突然女の子になってしまった。
 理由はまったくわからない。よって戻れるかも不明。
 困ったので彼女のふたばに相談したら、

「女の子のきよひこが可愛いからこのままでもよし!」

 とか言い放ってくれましたよ。すごくいい笑顔で。
 で、その後何故か一緒に風呂に入ることになったのだが、脱衣場で服を脱いだ時にふたばが大きな声を上げた。

「きよひこ、下着つけてないの!?」
「そりゃ、今日なったばっかだし」
「あ、そっかぁ…」
「別につけなくてもいいだろ?お前の身体よりいろいろと小さいんだから」
「駄目よ、女の子はちゃんとした下着つけないと大変なことになっちゃうんだからね!」

 そう言いながらふたばは箪笥から一組の下着を取り出した。

「ほら、この下着はどう?サイズも今のきよひこにあっていると思うわ」
「…まあ、しょうがないな」
「昔のお古でいいなら何枚かあげるわよ。…あ、服も必要ね」
「そうだな…男の服だとここまで来るのも大変だったしな」

 女の子になった影響で、俺の身長はかなり縮んでしまった。
 前はふたばよりも頭一個大きかったのに、今では双葉のほうが大きい。
 胸とかも、それなりの大きさでしかない。
 どうせなら、もっと『ないすばでー』になったほうがいろいろ楽しめてよかっただろうに…。


「でもまあ…まずはお風呂に入りましょう♪」
「…いつまでも裸じゃ風邪を引いちまうしな」

 それにしてもやけに楽しそうですねふたばさん。

 さて、風呂である。
 風呂であるということは、それ即ち全裸であるということである。少なくとも、日本では。
 そして一緒に風呂に入るということは、『ふたばも全裸』だということで。

「ねえ、きよひこ?」
「…なんだよ」
「なんでこっち見ないの?」
「見れるかぁ!」

 勢いで一緒に入っちゃったけど、よく考えたらふたばも脱ぐんじゃないか!!
 付き合っているとはいえ、俺達はまだそこまでの関係になってなかった。
 何度かそういう雰囲気にはなったことがあるが、その都度なにかしらのトラブルが起きてうやむやになってしまっていた。
 この間なんか、俺の部屋でついに…というところで、外出していたはずの母さんが部屋にやってきやがりました。しかもちょうどふたばを押し倒した時に。
 母さんは物凄くいい笑顔で「ごゆっくり〜♪」とか抜かしやがりましたが、もちろんその後できるわけがなく。
 そんな訳で、俺はまだふたばの裸を見たことがないのだ。
 ある意味チャンスではあるのだが…こんな状態で裸見るのは、なんか卑怯な気もする。
 そういうわけで、俺はふたばに背を向けてる状態で体を洗っている。

「いいじゃん、女同士なんだし」
「俺は男だぁ!」
「今は女だし、私達は付き合っているわけだけど」
「そうだけど…」
「それに、私はきよひこにだったら見られてもいいんだけど。というかきよひこにしか見せん」
「でもなぁ…」
「…ねえ、そんなに私、魅力ない?」
「そんなことないけど…」

 なおも渋る俺の背中に、突然柔らかいものが二つ。

「わぁ、きよひこの背中、ちっちゃぁい!」
「な、何をしてるんだよ!」
「優柔不断な彼氏様の身体を洗ってあげようかと」

 そう言いながら手を伸ばし、ボディーソープにまみれた手で俺の胸に触ってくる。

「ひゃぅ!」
「柔らかいねぇ…本当に女の子の胸みたい…」
「ゃぅ…揉むなぁ…」
「でも私より小さいねえ」
「わ、悪かったな!」
「いえいえ、むしろそれがいい。私よりスタイルよかったら…ちょっとショックだし」

 背中ではふたばの胸が擦り付けられていて、前では俺の胸が揉まれている。
 柔らかいものが押し付けられる心地よさと、身体の内側から生じる快楽。
 二つの気持ちよさに、いつしか俺は流されていた。何がなんだかわからなくなっていた。



「はぁ…はぁ…」
「可愛い声だったよ、きよひこ♪」
「………」
「ねえきよひこ、こっちを見て…」

 ふたばは俺の顔を無理やり自分の方へと向けさせた。
 ふたばの顔が、胸が、身体が目に飛び込んでくる。
 今の俺よりも大きくて、柔らかそうな胸。
 すっきりとした細い腰。いつも『太ったぁ…』とか嘆いていたけど、そうは見えない。
 そして、うっすらと毛に覆われた…女の子のアソコ。

「どう?それなりに自身はあるんだけど…」
「………」

 綺麗だと思った。
 でも、それを口にするのは憚られた。
 今の身体で、ふたばにその言葉を言ってあげる資格なんて…多分ない。
 だって今は、女同士だし。
 男のときだったら、自信を持って伝えられたと思う。
 でも、今の女の姿で…ふたばを好きでいていいのだろうか、そういう思いが心の片隅にあった。

 黙っている俺に、ふたばは静かに微笑み、語りかける。

「ねえ…私の事、どう思ってる?」
「…どうって…好きだよ?」
「うん、私も大好き。きよひこが女の子になっても、それは同じ。
 きよひこが男だから好きになったんじゃない。きよひこが『きよひこだから』好きになったの。
 きよひこにだったら何されてもいいと思ってる。
 デートのたびに手を繋ぎたいとか、キスして貰いたいとか思ってた。
 この間押し倒された時だって、あのまま抱かれていいと思ってた。
 だからね、裸を見られたってかまわない…というかむしろ見てほしいの。
 ほかの誰でもなく、きよひこに見てほしい。
 大切に思ってくれるのはわかるけど…もっと積極的に扱ってほしかったりもするんですよ、私は」
「でも、この身体じゃふたばに…」
「関係ないわよ。私は今のきよひこも気に入っちゃったし。
 それに、身体は女同士だとしても…心は、『男と女』だもん。
 だから…」

 ふたばは俺の手をとり、自分の胸へと誘う。

「一緒に、ね?」



 目が覚めたとき、俺もふたばも裸だった。
 俺の隣で、ふたばはニヤニヤ笑ってる。

「可愛い寝顔だったわよ♪」

 顔が赤くなるのがわかった。
 …寝顔の感想を言うのは反則だと思う。恥ずかしいじゃないか。
 ちょっと悔しかったので、俺も言ってやった。

「ふたばだって…昨日の夜は可愛かったぞ」
「…夜だけ?」
「すいませんいつだってふたばは可愛いです」
「よろしい♪」

 …口では勝てそうにない。

「さて、着替えてきよひこの家に行きましょうか」
「…家へ?」
「うん、きよひこにあげる服持っていってあげないとならないし…あとおば様へご挨拶したいし」
「挨拶って…なんでさ」
「いや、『きよひこを私にください!』って言いに」
「…いきなりそれかい!」
「それは冗談。でも、これからの私達の事…ちゃんと相談しないと。どうせ、女の子になったことも適当にはぐらかしてるんでしょう?」
「なっ!」

 なんで知ってるんだよ!?

「ちゃんと話しなきゃ駄目だって」
「…そうだな」

 この身体のことも、ふたばとのこともちゃんと話し合わないといけない。
 いろいろと障害があるが…多分大丈夫だろう。

「大丈夫、私も一緒にいるから…ね?」
「ああ、ありがとうな」

 ふたばが、隣にいてくれるから。




えっちぃシーンを飛ばすのは悪い癖です。
だからうまくならない。


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