まほうにっき
悪の組織「カオス」に捕まってしまった事により、俺の運命は変わってしまった。
改造人間にされた俺は、洗脳される前に脱走に成功。
俺は正義の味方・仮面キヨヒコとして「カオス」と戦う事を決意した…と、ここまでならよくある話。
何体もの怪人やロボットとの勝負に勝ち続けた俺を、「カオス」はついに本気で倒しに来た。
なんと幹部も含めた怪人30体、ロボット28体、戦闘員200名という総戦力を投入してきた。
…勝てるかっての。
それでもかなりの数を撃退したが…力及ばず、俺はついに敗れた。
ああ、ここでおしまいか…。
そう考えていた時、突如一人の少女が戦場に乱入してきた。
少女は俺を抱えて逃げ出した。
気がつくと、研究所のような施設に連れてこられていた。
「仮面キヨヒコさん、あなたの身体は限界に来ています」
少女は抑揚のない声で語る。
「ですが、あなたのような勇気のある人を失うわけには行きません。そこであなたのために、新しい身体を5つ用意しました。お好きなものを選んでください」
「わーい、新しい身体…って全部女じゃないか!」
「ええ、それが何か?」
「何か?じゃねーよ!男の身体はないのかよ!」
「ありませんよ。ここは『人工魔法少女研究所』ですし」
「何その怪しい施設!?」
「さあ、どれにします?早くしないと…あなた死んじゃいますよ」
「うぅ〜」
こうしてツインテールのよく似合う魔法少女・マジカル☆きよりんが誕生した…。
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「ふふふ…仮面キヨヒコを倒した今、我等を阻むものなどいない!」
カオスの幹部であるドクターデスゴッドは、自らが作り上げた怪人に命令する。
「さあ、街を破壊するのだ!」
そんなこと、させるものか!
「待て!」
「だ、誰だ!」
「愛の限り戦い続ける!魔法少女・マジカル☆ふたばん!」
「…勇気を持って戦い続ける。…魔法…少女・マジカル☆きよりん」(小声)
「らぶりぃでちゃーみんぐな私達が!」
「あなたたちのやぼーをぶっつぶすぜー」(小声)
「………」
「………」
ああ…敵の視線が痛い…。
「キヨさんもっとやる気出して!」
「無理!実際にやると恥ずかしいってこれ!」
「恥ずかしくてもやるんです!それが美学です!」
「美学より人としての尊厳を大切にしようよ!ほら、ドクターデスゴッドも呆れてるから!」
「呆れさせときましょう!これから私達が叩きのめすんですから!」
「…なんなの、貴様達?頭大丈夫?」
「悪の秘密結社に言われたくねーよ!」
「キヨさん、やっちゃいましょう!」
「おう!」
そう、やるしかないんだ。
俺達にはもう行き場はないんだから…。
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「キヨさん、身体の調子はどうです?」
俺を助けてくれた少女・フタバが尋ねてきたので、率直な感想を答える。
「…胸が重い。髪邪魔」
「そのうち慣れますよ」
だろうね。慣れるのもどうかと思うけど。
まあ身体への不満はこの際どうでもいい。死ぬよりはマシなはずだ。
例え女になっていたとしても、心の奥に燃えるカオスへの怒りは変わっていない…多分。
「で、これからこの身体について調べるんだって?」
「ええ、そうです。身体との相性を調べると聞いていますよ」
「ん、そうか。面倒だな…どんなことするんだ?」
「さあ…?私は変身アイテムの実験にしか付き合ったことがないので…」
「フタバにもわからないのか?」
「はい…」
なんか不安だ。俺は何をされるんだろうな。
フタバも心配げな表情をしている。
「でもまあ変な事はされないだろ、多分」
「だといいですけど…気をつけてくださいね?私が言うのもなんですが、ここの人たちはいまいち信用できませんから」
「…何かされたことがあるの?」
「いえ、特に何かされたというわけでは…。でも、たまに変な視線を感じるんですよね…」
「変な視線?」
「私が自意識過剰なだけかもしれませんのではっきりとはいえないのですが。
その事もあって、アイテム以外の実験は手伝わない事にしたんです」
さあ雲行きが怪しくなってきました。
このまま逃げて…駄目だな、この身体に慣れてない以上、すぐに捕まっちまうだろう。
…考えても仕方ないな。素直に実験台にされますか…。
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「うぅ…ぐすっ…」
「ほら、もう大丈夫ですよキヨさん…私がついていますから」
「…ぐすっ…うん…」
子供のように泣きじゃくる俺を、フタバは優しく抱きしめてくれる。
身体との相性や能力を確認するため、さっきまで研究所の奴らの実験に付き合わされた。
よくわからない怪物と戦わされたり、身体の隅々を細かく計測されたりと、まるで人をモルモットのように扱いやがる。
まあそれだけなら我慢しよう。研究してるんだからデータくらいとって当然だし。
ただ、これらの作業を男がしてくるのは納得いかない。
いくら元が男だとは言え、今はか弱き女の子の身体。男に囲まれた状況は落ち着かない。
まあ研究だから、そう自分をごまかしながら実験に付き合う。
最初に感じたのは視線。
まるで何かに舐められているような、そんな漠然とした不安が襲ってくる。
だが、その事を追求する前に身体を計測される事になった。
裸の俺を囲む数人の男たち。
最初のうちは普通に身体のサイズを測っているだけだった。
…思えば、これもおかしいんだよな。だってこの身体、元々こいつらが用意したものなんだから。
わざわざ俺が使っている時に測る必要なんてない。
計測している手の動きがだんだん怪しくなってきた。
手の甲が胸に触れたり、何度も同じ場所に触れてきたり…。
気付いた時には押し倒されていた。
俺は跳ね除けようとするが、今の身体では男の腕力に勝てるわけもなく…空しく押さえつけられた。
怖い。
自分の身体が変わってしまったことへの恐怖。
力を失った事への恐怖。
自分に迫りくる危機への恐怖。
なにより、男への恐怖。
今までどんな敵と戦っても、感じた事のない恐怖感に包まれていた。
やがて、男たちは俺の身体を蹂躙…できなかった。
鈍い音がしたかと思うと、男達は全員床の上へ倒れていた。
「…大丈夫ですか、キヨさん」
「…フタバ?」
「はい、私が来たからには…もう平気ですよ」
そういいながら笑顔を見せるフタバ。だがその表情は硬い。
今までなんとか信じていたものに裏切られた、その事実はフタバにとってもショックのはず。
だけど、フタバは俺に対して笑っていた。きっと、俺を不安にさせないように。
その心遣いが嬉しくて― そして同時に、何もできなかった自分が情けなくて― 俺は泣いた。
子供のように、大きな声で泣いた。
フタバは慰めるように俺を抱き締めてくれていた。
その日、『魔法少女研究所』は消滅した。
残ったのは二人分の変身アイテムと、いくつかの魔法アイテム。
やつらの物を使うのは腹立たしいが、利用できるものは利用したほうがいい。
俺達はたった二人でカオスと戦う事を決意した。
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「ちぃ!覚えていろよ、マジカル☆ふたばん!マジカル☆きよりん!」
怪人を撃破し、作戦は阻止したものの、ドクターデスゴットは逃がしてしまった。
「…逃げられちゃいましたね」
「なぁに、次があるさ」
フタバは悔しそうだったが、初陣としてはまずまずであろう。
こちらはほぼ無傷、一般人への被害はなし、怪人の破壊には成功。
上出来だ。
いろいろ恥ずかしかったが、気にしないことにする。
特に最後のとどめに使ったフタバとの合体技は…凄く、照れくさかった。
今回は勝ったとはいえ、次回はどうなるかわからない。
奴らより後手に周り、誰かを犠牲にしてしまうこともあるかもしれない。
奴らの猛攻に傷つき、倒れることもあるかもしれない
それでも…俺達は、やらなければなるまい。
でもまあ、今は次の戦いに備えゆっくり休もう。
俺達の戦いは、まだ始まったばかりなのだから。
「キヨさん、頑張りましょうね」
「ああ、そうだな」
恐らく、激しい戦いになるだろう。
でも、負けてられない。
フタバを守らなくてはならないから。
あの時フタバが助けてくれたように、今度は俺が助ける番だ。
「それじゃ、帰るか」
「うん!」
自然と、俺達は手を繋いでいた。
互いの指を絡めあうように、手を離さぬように―恋人のように、姉妹のように。
願わくば、この手をずっと繋いでいられますように。
仮面ラ○ダーがプ○キュアに路線変更するような話です。
男の扱いが悪いのはいつもの事。
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