気がついたら女の子



 僕は毎日、結構早い時間の電車に乗る。
 部活の朝練で、朝が早いフタバさんと車両に乗り合わせるためだ。
 …といっても、別に話をしたりとかそういうことはなく、ただ眺めるだけ。

 そして、今日もフタバさんが乗り込んできた。
 あれ?誰か探してる?

「あ、おはようキヨ!」

 …え?僕?

「お、おはよう…フタバさん」
「あら、他人行儀ねえ。私とあなたの中じゃない、呼び捨てにしてよ、いつも通りに」

 …いつもどおり?どういうこと?何かがおかしい。
 とりあえず話をあわせておこう…。

「それにしても、今年も暑いわねぇ…今度、二人で海行こうよ!」
「う、うん…」
「あなた、今年は学校とは違う水着にしなさいよ。ビキニとか似合うって絶対」

 び、ビキニ!?

「ぼ、ぼく男だよ!ビキニなんて…」
「…寝ぼけてるの?こぉんな立派な胸をお持ちの男なんて、何の皮肉よ」

 …ええ!?

 な、なんで!?
 自分の身体を見てみれば、胸は確かに大きく膨らんでいた。
 そしてスカートを穿いている…ていうかこれ、女子の制服だ!
 いつもズボンのポケットに入れてある携帯は…いつの間にか背中に背負っていたバッグの中にあった。
 取り出してみると、見慣れないピンク色の可愛いデザインの携帯になっていた。
 …なんで?確か朝起きたときは…男だった…はず。
 何だか記憶も曖昧。

「それにしても大きいわねぇ。私も小さい方ではないけど…キヨには負けるわね」
「ってフタバさ…フタバなにやってんのさ!」
「何って…キヨの発育観察。いつもやってるじゃない」

 いつもやってるの!?
 というかここ、電車の中!
 いくらフタバが相手でも…恥かしいよぅ…。
 …今なんか変じゃなかった?気のせいかな?

###################################################################

 なんだかんだで学校に到着。
 事態が全然飲み込めないけど…大丈夫かなぁ…。
 なんとかして今日を乗り切らないと…。

「ってキヨ、どこへ行くのよ?」
「へ?」
「朝錬出ないの?」
「朝錬…?」

 僕…帰宅部…だったはず。

「…本当にどうしたのさ?我らが陸上部のエースがそんなんじゃ、後輩達に笑われるわよ?」
「ええ!?」

 本当にどうなってるんだよぅ…。

 フタバさんに引き摺られながら女子陸上部の部室へ。

「あ、キヨ先輩おはようございます!」

 小柄で可愛らしい女の子が挨拶してくる。

「お、おはよう…」
「どうかしました?元気ないですねぇ?」
「なんか今日はキヨの様子がおかしいのよ」
「またフタバ先輩がセクハラでもしたからじゃないですか?」

 また?常習犯なの!?
 フタバさんの意外な一面を見てしまった。喜んでいいのか悪いのか…。

「いや、様子がおかしいから手の出していいものかどうか…」

 出してた!見てたじゃない!

「まあそれはともかく、あなたもキヨの様子、気に掛けといてね」
「勿論!お任せください!」

 わあ心強い。さすがワカバちゃんだ。

「ありがとう、ワカバちゃん…あれ?」
「いえいえ…どうかしました?」
「ううん、なんでもない」

 僕、この子の名前聞いてないよね?何で今名前出てきたんだろう。

「さ、とりあえず着替えましょうか」
「は〜い!」
「え!?」

 僕の目の前で、服を脱ぎ始める二人。思わず目をそらす。

「…何で目をそらすんです、先輩」
「女同士で何を恥かしがってるの」

 でも中身は男なんです!…といっても無駄だろうなぁ。

「まさか着替え方も分からない…なんてことはないよね?」
「え?」
「ワカバちゃん、キヨの着替え二人で手伝ってあげよう」
「了解です!…キヨ先輩、覚悟!」
「うわ!?いやぁぁぁ!」

 甲高い悲鳴が辺りに響いたとか響かなかったとか。僕からあんな高い声でるなんて…信じられない。
 それにしても、二人とも変なところばかり触って…お嫁にいけなくなったら…って行かないよ!
 何かどんどん女の子に近づいてる気がする…。どうしよう…。

「ふ、フタバ、胸揉まないでよぅ…ひゃぁ!」(モミモミ)
「いやいや、大きいおっぱい、いいですなぁ」

 どこの親父ですかあなたは。

「ホント、キヨ先輩はスタイルいいですよねぇ。さすが我が陸上部の二大アイドルの一人ですよ」(スベスベ)
「こ、腰に抱きつかないでワカバちゃん!」

 顔とか手とか、撫で回さないでよぅ!

「二大アイドル?何それ?」(モミモミ)
「あれ?フタバ先輩知りませんでした?キヨ先輩とフタバ先輩のことですよ」(スベスベ)
「ふ、二人ともやめてよぅ…」

 うぅ〜、なんか気持ちいい…。

「あら、それは光栄ね。その割には…私たちモテないけどねぇ」(モミモミ)
「まあ噂してるの女子だけですし。男子は水泳部のスミレ先輩とか、生徒会長のアキさんとかに夢中ですよ。見る目が無い奴らばっかですよ、ホントに」(スベスベ)
「あぅ〜」

 …男子にもてないのは助かるなぁ。もし告白なんてされたら…ドキドキしちゃう…っていうか嫌だよ!男と付き合うなんて。

「…まあ、私にはキヨがいるからいいか。ねえ、キヨ?」(モミモミ)
「ふぇ!?」

 な、何言ってるんですかフタバさん!?(身体は)女同士ですよ!

「わたしもキヨ先輩一筋ですから!」(スベスベ)
「ぁあん!」

 ワカバちゃんも対抗しないでよぉ!

 …もうお嫁いけないよぅ。
 そんな事を考えながら、ボクとフタバさんは教室へと向かっていた。
 さっきの事のせいで朝練にも身が入らず、みんなに心配されちゃうし…フタバさんって、こういう人だったのか…。

###################################################################

「ほら、元気出すの!」
「誰のせいだよぅ…」
「いつものこと、いつものこと」

 これが日常なのか…。嬉しいような、大変なような。

「こらキヨ、どこへ行く気?」
「へ?教室だけど?」

 自分の教室に入ろうとしたらフタバさんに怒られた。

「いや、あなたの教室こっちだから」

 そこはボクの昨日までの教室の隣の部屋―フタバさんのクラスだ。女の子に変わっただけで、教室まで違うの?
 フタバさんに促され、そっちの教室に入る。並んで、隣同士の席に座った。

「あら、教室は間違えるのに、席は間違えないのね」
「え!?ああ、うん」

 ここがボクの席か…。そういわれると、そういう気もしてきた。
 少しずつ、女の子としての自分に染まっていくような気がした。


 授業自体は男子でも女子でも変わらない。
 ただ、横にフタバさんがいるのが新鮮だった。
 フタバさんは授業を受けながら、度々ボクに話しかけてくる。
 会話の内容は他愛のないことで、昨日のテレビのこととか、部活のこととか、先生の発言に対するツッコミとか、そんな感じ。
 最初のうちはこの慣れない環境と、フタバさんと会話しているという事実に緊張していたためかぎこちないやり取りが続いたが、二時限目、三時限目と時間が経つにつれ、自然に接することが出来てきた。

「キヨは犬と猫、どっちが好き?」
「犬かな?どっちも好きだけど」
「犬かぁ。いいんじゃない?」
「フリスビーとか投げて『取ってこーい』とか一度やってみたい」
「そこまでやるの大変そうだね」
「でも楽しそうな感じしない?」
「まあね。ところで私は猫派だったりする」
「そうなの?」
「うん、気まぐれなところに共感してたりする…ちなみに夜は太刀魚が好き」
「…なんで?」

 こんな風に、普通の会話をすることも出来てきた。この後、先生に「お喋りするな」と怒られたけど。
 人間、大抵の事はすぐに慣れてしまうものだと思った。

###################################################################

 さて、四時限目が半分過ぎた頃にに一つ、問題が発生した。

 お し っ こ し た い 。
 やばい、漏れそう。
 授業が終わるまでまだ時間が掛かりそうだ…。
 それまで…耐えられるか?

「キヨ、どしたの?」
「…なんでもないよ」

 おしっこしたい、とは言えないのでごまかしてみる。
 フタバさんはじっとこちらを見つめた後、手を上げて立ち上がった。

「先生!キヨが調子悪そうなので保健室連れて行きます!」
「ちょっ、フタバ!?」
「いいからいいから」

 先生の返事も聞かず、フタバさんはボクの腕を掴んで教室の外へ出た。


 連れて行かれた先は女子トイレだった。どうやら、見透かされていたらしい。
 女子トイレに入ることに若干恥ずかしさを覚えたが、それ以上におしっこしたいという欲求が強かった。
 大丈夫だ、今のボクは女の子だから女子トイレ入ってもおかしくはない…っ!
 覚悟を決めてトイレへと連れ込まれていく。


「まったく、辛くなるまでトイレ我慢しないの」
「…ごめん」
「ホント、キヨは私がついてないと駄目だねぇ」
「…それはいいんだけどさ、フタバ」
「何?」
「なんで一緒のトイレに入ってるのさ」

 そう、何故かフタバさんはボクと同じ個室に入っていた。
 洋式トイレに腰掛けているボクをニヤニヤと眺めているフタバさん。
 …変態ですかあなたは。

「いいじゃない、私とキヨの仲なんだし」
「どんな仲!?」
「いわゆる連れションよ」
「絶対違う!というか女の子が連れション言うなぁ!」

 この人なんかおかしい。
 なんというか、昨日までのフタバさんのイメージが完全に崩れた気がした。

「ん?もしかして…見られて恥ずかしかったのかなぁ?」
「当たり前だよ!」
「可愛かったわよ?」
「可愛いって言えば何でも許されると思うなぁ!」
「大丈夫、私も見せてあげるから」
「なっ…」

 フタバさんが…おしっこするところ…!?
 …見たい。凄く、見たい。
 …ああ、ボクも変態かもしれない。

「なんなら、飲む?」
「なにを!?飲まないよ!」
「冗談よ。じゃ、次は私がおしっこする番ね」

 そう言って、フタバさんはぱんつを脱ぎ、スカートを捲りあげた。
 そして洋式トイレにわざと脚を開きながら座る。
 それは必然的にフタバさんの大事な場所がボクの目の前に晒されるという事で…。
 駄目だ、こんな状況で見ちゃいけない!
 頭の中でそう考えても、視線はフタバさんの股間から動かせなかった。

「んっ…」

 じょろじょろ…と、フタバさんのアソコからおしっこが出てくる。
 ―女の人って、あんなところからおしっこってでるんだ…。
 先程の自分のおしっこの感覚を思い出し、ちょっとドキッとした。
 ふと顔を上げると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたフタバさんの顔があった。
 そんなに恥ずかしいなら、見せなければいいのに。
 ―フタバ、可愛い。


 四時限目終了の鐘がなった頃、ボク達はトイレから出た。

「…結局、保健室行かなかったね」
「そ、そうだね…」
「………」
「………」

 お互いにおしっこしているところを見られた恥ずかしさからか、会話が続かない。

 先に沈黙を破ったのはフタバだった。

「よ、よし、ご飯にしようよ!」
「う、うん!そうしよう!」
「購買行こう購買!屋上でパン食べよう!」
「そ、そうだね!」

 ボクとフタバは、ギクシャクした動きで購買へと向かって行った。

―後に、偶然その光景を見たスミレ(水泳部、男子に人気がある)はこう語る。

「ええ、二人とも顔真っ赤でしたよ。
 初めてデートする相思相愛の初々しいカップルでもああはなりませんって。
 二人してロボットみたいな動きをしていて、微笑ましいというか怪しいというか…。
 まあ、見ててあきませんよ、あの二人は。この間も…」

###################################################################

 屋上にでてまず感じたのは、スカートの頼りなさだった。
 屋内にいたときは大して気にならなかったけど…脚のあたりが涼しい。
 しかもヒラヒラしているから、屋上の強い風だと簡単に捲れてしまいかねない。
 まあ、捲れたところで見るのはフタバだけだけどね。

 そう、屋上には誰もおらず、ボクとフタバの二人っきり。
 いつものボクなら大喜びのシチュエーションだけど、さっきのトイレの件でなんとなくぎこちない雰囲気のボク達には、この状況は気まずい。
 その為、お互い言葉を発することなくパンをもそもそと食べている。

―また、風が吹いた。
 その風に、ボクの髪の毛が揺れる。
 女の子としては短いけど、昨日までのボクより長い髪。
 胸元に目を落とせば、ふっくらとした胸。
 その下にはほっそりとした腰と、大きなお尻。
 そしてちょっと日に焼けた、細くしなやかな脚。
 …そのどれもが、昨日までのボクとは違う女の子のモノ。

 どうしてこんなことになったのだろうか。
 考えてみれば、この事態はおかしい。
 朝起きたときは男の子だった…気がする。
 着替えて身支度をしていたときは確実に男の子…だったような。
 家を出て、駅に向かっているときは…どうだったの?
 そもそも、ボクは、男の子だったの?
 もしかしたら、ボクは元々女の子で…男の子だったという記憶の方がおかしいんじゃない?
 …もう、よくわからない。

「…キヨ、こっち向いて」
「え?」

 フタバの方へ顔を向ける。
 …目の前に、フタバの顔があった。
 目を潤ませ、やや頬を紅潮させたフタバは、静かに囁く。

「…じっと、しててね?」

 返事をする間はなかった。
 気がついたら、ボクの唇に、フタバの唇が触れていた。

―ファーストキスだった。

 何がなんだかわからなかった。
 ボクは夢でも見ているのだろうか。
 突然女の子になったと思ったら、憧れの女の子と仲良くなって、何故かキスをしている。
 まるで現実味のない状況だった。

 気が付くと、押し倒されていた。
 フタバの体重が掛かってくる。その重さに、心地よさを感じた。

「ん…んん…ぅん……」

 フタバの舌が、ボクの唇を抉じ開ける。
 抵抗など、出来るわけがない。
 フタバの舌が、ボクの舌に絡みつく。
 もはや何がなんだかわからない。
 フタバの舌が、ボクの口の中を蹂躙していく。
 さっきまでフタバの食べていたパンの、甘いクリームの味が広がった。
 いつしか、ボクの舌もそのフタバの舌の動きに答え始めていた…。

 ぬちゃぬちゃと、生々しい音を立てながら、ボク達は互いの舌を求め合っていた。

―さっきまで色々考えていた気がするけど、もうどうでもよくなっていた。

###################################################################

 自分の存在がぐちゃぐちゃになっているのがわかる。
 男の子としての僕と、女の子としてのボク。
 もうどっちのボクが真実なのか、誰にもわからない。

 男の子としての僕は、この学校を受験したときにフタバさんと出会った。
 集団面接のときに一緒に受けていたうちの一人がフタバさんで、可愛い女の子だなぁと印象に残っていた。
 入学して、偶然同じ電車に乗っていたのを見かけてちょっと嬉しくなった。
 いつしか、フタバさんの姿を目で追いかけるようになっていた。
 フタバさんと仲良くなりたい。
 その想いは、ずっと心の奥に押しとどめていた。
 僕には彼女に声をかける勇気はなく、ただ彼女を眺めているだけしかできなかったのだ。

 第一歩すら踏み出せない自分が、嫌いだった。


 女の子としてのボクは、小学校のときにフタバと出会った。
 男の子にいじめられている所をボクが助けて以来、ずっと友達だった。
 何をするもにも二人一緒。勉強も、運動も、部活も一緒。
 「まるで本当の姉妹のようね」とお母さんに笑われたこともあったっけ。

 でも、最近ちょっと悩んでいる。
 フタバと、いつまで一緒にいられるのだろうかって。
 友達とはいえ、ずっと一緒にいられるかどうかわからない。
 もしかしたら将来、フタバが誰かと結婚するかもしれない。
 嫌だ。男の子なんかに、フタバを取られたくない。
 誰かに取られてしまうくらいなら、いっそフタバを壊してしまいたい。

 親友に対してそんな風に考えてしまう自分に、嫌悪感を抱いていた。

###################################################################

 フタバの口が離れる。
 仰向けのボクに覆いかぶさっっているフタバ。

「ごめん、キヨ…」
「え?」
「こんなことして…ごめん」

 逆光でフタバの表情はわからない。

「キヨの考え事している顔見てたら…つい…」
「フタバ…」
「おかしいよね、女の子同士なのに…」

 冷たいものが顔に当たる。
 フタバは、泣いていた。

 ああ、泣く必要なんてないのに。
 だって、ボクは…。

「フタバだったら…いいよ…」

 フタバのことが好きだから。

###################################################################

 丁寧にボタンを外し、ブラウスの前を開く。
 薄い緑色の下着に包まれたボクの胸を、フタバはじっと見つめてくる。

「やっぱり…大きいわね…」
「そう言われてもあんまり嬉しくないね…」

 男の子の自分には本来ありえないものだし、昔から男子にジロジロ見られてきたし…。
 こんなに重いものとは思わなかった…。走るときは揺れるから、小さい胸の娘がうらやましかったな…。
 …駄目だ、頭の中がぐちゃぐちゃして、考えが纏まらない…。
 フタバが、ボクの胸を下着の上からそっと触った。

「んっ…」
「柔らかい…キヨの胸、気持ちいい…」

 胸に触れた手が、優しく動き出す。
 フタバの小さな手が動くたび、ボクの胸が形を変えていく。
 細い指が艶かしく動き、ボクに未知の感覚を与えてくる。
 揉まれる痛みと触られているくすぐったさ、そして―少しずつ湧き上がってくる、不思議な感覚。
 不快ではなく、寧ろ心地好く、自然とその感覚に身を任せてしまいそうになってしまう。
 気持ちいい。
 これが女の人の"快楽"というものなのだろうか?

「キヨの乳首…かたくなってるぅ…」
「ひゃう!」

 突然、乳首を舐められた。否、咥えられた。
 まるで乳飲み子のように、フタバはボクの胸を唇で、舌で、歯で、蹂躙してくる。
 そのたびボクは、悲鳴のような声を上げてしまう。

「ひゃぁ!やぅ…ぁん!ひゃぅ!」
「キヨの声、可愛い…もっと、もっと、聞かせて…」

 フタバは片方の乳首を咥えながら、もう片方の乳房を手で揉みしだいてくる。
 抵抗など、出来るはずがない。
 か細い声を上げながら、ボクの体は少しずつ熱を帯びていった。

 スカートを捲りあげられ、フタバの手がボクの股間に触れる。

「濡れてきてる…感じてるんだね、キヨ…」
「そ…そう…かな…?」

 ボクは、女の子として感じているんだ…。
 だんだんと、男の子だったということを忘れていくような気がした。
 でも、それでもいい。
 だって、気持ちいいんだもん。


 フタバの指が動く。
 ゆっくりとした拙い動きだが、それでボクには十分な刺激だった。
 胸とアソコから同時にやってくるその快楽に、ボクは翻弄されていた。
 男のときのオナニーなんか比べ物にならないほど凄い。
 例えるならば昔の料理アニメで、料理を食べただけで大阪城を壊した演出のような感じ。
 それくらい、気持ちいい。

「ぅあ…っん!ひゃぅ…きゃっ!ぁう…ぁん!」
「思った以上に、感じやすいのね…」

 耳元で囁かれ、顔の体温がさらに上昇するのがわかった。
 女の子の快楽には男の子じゃ耐えられない、というのは本当なのかもしれない。
 …まさか身をもって実感する日が来るとは思わなかったけど。

 だんだんとフタバの指の動きが激しくなる。
 それに伴い、ボクの体にやってくる刺激も強くなる。

「ああ、ひゃう、や、やめ、ああん!」

 もう、何がなんだかわからない。
 気が狂いそうだった。
 女の子が、こんなに気持ちいいなんて…ずるい。

 そして一段と強い快楽の波が押し寄せてきた。

「あああぁ!!!!」
「キヨ、イッたんだね…」

 イく?これが…女の子の絶頂?
 …よくわからないけど、凄かった。
 こんなに凄いなら…男の子でいる必要…ないよね…。
 女の子の方が…いい。

###################################################################

 結局、その後の授業は全部サボってしまった。
 あれからボクとフタバは、お互いの体を貪るように、求め合った。
 ボクも攻められるだけではなく、フタバを攻め返したりもした。
 お互いのアソコ同士をくっつけあう、所謂貝合わせもやってみたりもした。
 最終的には相手を気持ちよくすることしか考えられなくなっていて、気が付いたらボクとフタバは裸で抱き合って、屋上で寝転がっていた。
 …誰かに見られてないだろうか。
 今更そんなことが気になってきたが…まあどうでもいいや。
 だってボクにはフタバがいるんだもん。
 傍らで無防備に眠るフタバの寝顔を見る。可愛い。
 その寝顔が微笑ましくて、ボクはしばらくずっと眺めていた。

 もう、男の子だったことを微かにしか思い出せない。
 でも、それでいいよ。
 だって今のボクの中には、男の子だった頃にはなかった、フタバとの思い出がたくさんあるんだ。
 そしてこれからもたくさん、フタバとの時間を紡いでいくのだ。
 その時間を想像しながら、ボクはクスリと笑った。

###################################################################

「うまくいったみたいね」

 屋上で寄り添う二人を眺めながら、ワカバは笑う。

「次は何をしようかな?」

 そう呟きながら、ワカバは屋上から立ち去った。





一回書いて投げた奴を、ふと思い立って書き直した話です。
まあ内容はいつも通りなんですが、珍しくえっちぃ部分をそれなりに書いています。


戻る