膝枕



 どっかの偉い博士だかの実験に、高いバイト代に釣られて協力したきよひこ。
 研究所から戻ってきたきよひこは、実験の失敗により女になってきた。
 行く所がない、というので俺の家で暮らすことになったのだが…。

「ほら、としあき」

 疲れたなぁ、と言ったらきよひこが膝を叩きながら呼んできた。

「…お前は何がしたいんだ」
「いや、疲れたんだろ?」

 恥かしそうに顔を赤らめるきよひこ。

「…だから、何をしたいのか聞いているのだが」
「膝枕してやるって言ってんだよ!気付けよ!」

 してやるとは言ってないよね。

「…いいの?」
「まあ…世話になってるしな。これくらいしかできることもないしな…」

 なら、お言葉に甘えさせてもらおう。

「じゃあ、ついでに耳掃除も頼む」
「…任せろ!」

 きよひこは妙に嬉しそうに言った。


「…どうだ?痛くないか?」

 きよひこが聞いてくる。

「いや、凄く気持ちがいい」

 正直に答える。
 こんな気持ちいいのは初めてかもしれない。
 まず耳掃除がうまい。
 時に優しく、時に強めに、耳の内部にこびりついた耳垢を取っていく。ただそれだけなのに、妙に心地よい。
 …やるな、きよひこ。
 そして膝枕の感触も素晴らしい。
 女の子特有の柔らかさが、俺の頭に伝わってくる。
 そういえば、女の子にこういうことしてもらうのは初めてだ。
 ちょっと興奮してきた。
 少し硬くなってきてるし…何とは言わないけど。

 …落ち着け、俺。
 相手はきよひこだぞ、きよひこ。
 いくら今は可愛い女の子だからとはいえ、中身は男。
 なにより、親友にそんな邪な事を考えるなんて…最低じゃないか。
 ああ、でもマジ気持ちいい。

「…としあき、どうかしたか?」
「へ?」
「変な顔して…もしかして、痛かったか?」
「いや、そんなことない!大丈夫だって!」
「ならいいけど…」

 顔に出てたか…恥ずかしい。
 だが、これもきよひこが悪い。
 きよひこがこんなに可愛いのがいけないのだ。
 あまりに可愛らしいので、押し倒してしまいそうになったことも。
 なんとか我慢したが…しばらく自己嫌悪に陥ったよ、さすがに。
 親友に欲情するなんて…どうかしている。

「〜〜〜〜♪」

 鼻歌を唄いながら、にこやかに耳掃除をしているきよひこの顔を見て思う。
 …俺、我慢できるかなぁ。














 もちろん我慢できずに押し倒し、最後までしてしまったわけだが。
 事がすんだ後、俺はきよひこに土下座した。

「…ごめん」
「いや、謝るなよ。こういうときに謝るのは、ちょっと失礼だぞ」
「だけど…」
「なに、気にすることはない。お前のところに転がり込んだときからこうなる事は予測はしてたし…お前だったら構わないと思ってたしな…」

 最後のほうは照れながら、きよひこは許してくれた。

「それに…責任は取ってくれるんだろ?」

 ニヤニヤ笑いながらきよひこが言う。
 口調は軽いが、目は真剣だ。

「…ハイ、頑張ります」

 俺にはそう答えることしかできなかった。

「よろしい♪」

 そう言ってきよひこは目を閉じ、俺の唇に自分の唇を触れさせてきた。


 それからずっと、きよひこに頭が上がらなかったのは言うまでもない。
 …まあ、こういう生活も悪くはない。





珍しく男とくっつきます。
支援所に貼られた絵につけた短編なので、絵がないと威力半減。
だからといってこの場に絵をつけるわけにはいかないのですが……。


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