設定変更装置 2



「さて、まずは生意気盛りの弟で遊びましょう!」
 そう言いながら、鈴は弟(元孫)である武志の部屋をこっそり覗き込んだ。
 部屋は散かっていた。服は脱ぎ捨てられ、雑誌が乱雑に詰まれ、ゲーム機のコードは絡まっていた。
 そんな中、武志はベッドで寝そべりながら漫画本を読んでいた。
「ちゃんと家にいるわね。……ていうか勉強とか掃除とかしろよ漫画読んでる暇あるなら」
 武志は運動はそれなりに出来るが、勉強嫌いという典型的な運動部員だった。
「さてまずは……」
 扉の陰から設定変更装置を武志に向けると、ディスプレイに情報が表示される。

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変換前:才月 武志 (年齢は(ry) 男
外 見:長身、ややイケメン、筋肉質(軽)
性 格:うぬぼれや、反抗期
家 族:父、義母、義姉
特 徴:特技:サッカー(素人よりマシ、プロにはなれないレベル)
    女癖が悪い(現在3股)
    劣等感(義姉)
    シスコン(重度。本命は義姉)
    大食い(軽度。牛丼を大盛りで食べるレベル)
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「ほほう……」
 表示された情報を見て鈴は少し考える。
 どうやら、弟に抱かれている自分を想像しているようだ。
「……ないわ。もう少し筋肉がなければ喜んで抱かれてあげるのに」
 元老人とは思えない淫乱発言だった。
 ちなみに武志は別にマッチョといえるほど身体を鍛えているわけではない。鈴の筋肉嫌いは相当な物のようだ。
「しかし、我が弟は酷いな。3股とか、サッカーの腕前とか」
 武志は常日頃から「自分はプロになる。レギュラーになれないのは監督の見る目がないからだ」と言っていた。
 だが、データを見るかぎりはただの自惚れのようだ。
「自信を持つこと自体は悪くないけど……自分の実力を思い知るのも大切よ?」
 少々弟に呆れながらも、鈴はこの設定をどのように変更するか考えていた。
「とりあえずシスコンは残そう。顔はカッコいいより可愛い系のほうが好き……あと筋肉はなくそう」
 思いつく設定をどんどん入れていく。

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変換前:才月 武志 (年齢は(ry) 男
外 見:小柄、可愛い、華奢
性 格:素直
家 族:父、義母、義姉
特 徴:努力家(頑張ればたいていの事は出来るレベル)
    シスコン(重度。本命は義姉)
    小食(バナナは半分しか食べられない)
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 ここまで打ち込んで、鈴の手が止まった。
「……この設定、男じゃないほうがいいんじゃないだろうか。名前も変えちゃおう」
 性別欄と名前を入力し直す。
「どうせなら『理想の妹』を作っちゃおう。その方が楽しいし」
 特長にもいくつかの情報を追加する。

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変換後:才月 琴音 (年齢は(ry) 女
外 見:小柄、可愛い、華奢
性 格:素直、甘えん坊
家 族:父、義母、義姉
特 徴:努力家(頑張ればたいていの事は出来るレベル)
    シスコン(重度。本命は義姉)
    小食(バナナは半分しか食べられない)
    趣味:お菓子作り(おいしく食べられるレベル)
    趣味:ゴスロリ服
    趣味:可愛い物好き
    お年頃(えっちなことに興味津々)

変換前の意識:なし
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 入力が終わると、装置から光線が放たれる。
 ほんの一瞬で変化は終わった。

 先程まで散かっていた部屋は清潔感に満たされ、そしてすっかりと片付いていた。
 全体的にパステルカラーで埋め尽くされた部屋だが、黒と赤の衣装を身に纏う少女が異彩を放っていた。
 その衣装と小柄な体型、可愛らしい顔は人形を髣髴とさせる。
「んにゅ?あれ?わたし、なにしてたんだっけ?」
 少女――琴音は辺りをキョロキョロと見回す。
 その仕草は年頃の少女そのもので、ほんの数秒前まで男であった痕跡は残っていなかった。
 そんな琴音を見て、鈴は満足げな笑みを浮かべた。
「うん、あたしは武志の事も琴音の事も覚えてる。あたしの発明は完璧ね!」
 実は装置を操作した本人には、設定変更前の記憶が残るようになっていた。
 もちろんそれだけでは使用者が困るので変更後の設定にあわせた記憶も持ち合わせるようにもなっている。
 これにより、使用者だけは変化前後のギャップを楽しめるようになっているのだ。

 鈴は『琴音の部屋』に入る。
「あ、鈴ねぇ!」
 琴音は鈴の顔をみると満面の笑みを浮かべた。
 『武志』の頃なら「勝手に部屋入るな」と怒鳴るところだが、琴音は鈴が入ってきたことをむしろ喜んでいるようだった。
「琴音、暇?」
「うん!もちろん!」
 そう言いながら、琴音は鈴に抱きついた。
 それほど背の高くない鈴であるが、琴音はさらに小さい。
 鈴の胸元ほどの高さに頭があり、結果、鈴の大きな胸に顔を鎮めることとなった。
「ひゃぅ!」
 突然の行動に鈴は小さな悲鳴を上げた。
「えへへ……鈴ねぇのおっぱいおっきー。羨ましいなぁー」
 琴音は鈴の胸に顔を埋めつつも、上目遣いで鈴の顔を見つめる。
 その目つきはとろんとした感じで、なんとなくいやらしくも感じた。
 鈴はその表情を見て思った。

 食べちゃおう、と。

「ひぅ……ぁんっ!!」
 ぴちゃぴちゃという音に合わせて、琴音は声をあげる。
 はだけた胸元から見える小ぶりな胸が微かに揺れる。その頂はすでに固く勃っていた。
「可愛い声ね。素敵よ、琴音」
「ああ、鈴ね…ぇ……ひゃぁん!」
 鈴に股を広げられたまま、琴音は与えられる刺激に身を任せていた。
 スカートを捲りあげられ、股間を鈴に晒し、さらにその女として大事な部分を大好きな姉の指と舌で弄ばれている。
 そのシチュエーションだけで琴音の身体は興奮をさらに高めていった。
 琴音もお年頃の女の子だ(ということになっている)。性的なことに興味津々である(元からだけど)。
 ちょっと過激な少女マンガの影響で自分の身体を弄ってみた事だってある。
 その時に妄想したシチュエーションが、今、現実に行われている――それが、ほんの数分前に生み出された記憶だとは知らずに。

 攻める鈴も義妹の痴態に対し、(初めて女として)欲情していた。
 可愛い。ちっちゃい。おいしそう。艶かしい。柔らかい。白い。細い。華奢。生えてない。ちょっとぬれてる。えっちぃ。
 もう頭の中は琴音を頂くことに夢中だった。――琴音が元男であった事を意識しないほどに。
 装置の実験としては明らかに失敗なのだが……えっちな事をするほうが重要なのである。少なくとも、鈴の中では。

「ひゃぅっ、す、すず、ねぇえ!!」
「今の琴音、すっごくえっちな顔してる……」
「あ、ああっ、あぁぁぁっ!!!」


 その日、夜遅くまで二人の声が止むことはなかったという。
 そして翌日、寝坊した二人は母親に「ほどほどにしておきなさい!」と釘を刺されたという。






Pixivにて。
えちぃシーンがいつも以上に投げやりな感じですが、多分その時に色々あったんだと思います。
どんな心境だったのかまったく覚えていませんが。



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