夢百合草




 魔法の国。
 科学の発達した我々の世界と違い、魔法の力が発見され、そちらの方が発達した世界である。
 その影響か、我々の世界とは異なる生態をもつ生物がたくさん存在する。
 今回はその一つ、『夢百合草』についてのお話……

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 暗い森の中を、あたし――オルナ・スティックは一人で歩いていた。
 魔法学校の首席で卒業し、栄光ある正体を約束されたあたしが、本来ならこんな場所に来る必要はない。
 なのにわざわざやってきたのは、この森の奥に生えているヒトトビ草という薬草があたしの魔法研究に必要だからである。
 ただ入手するだけなら街でも変えるのだが、ヒトトビ草は希少性が高く、栽培に成功した例も存在しない。
 またヒトトビ草に含まれたマナを組み込んだ魔法が強力で、規制がかかっていることもあり、あまり一般の流通には乗らないのだ。
 だから仮に店頭に並んだとしても、とんでもない高値がついてしまう。
 そして大金を払って入手したとしても、その強力なマナ故に取り扱いが難しく、無意味に消費する事例が多数存在する。
 そんなわけであたしの実験は停滞していたのだが、転機は突然やってきた。
 酒場で旅人が、近くの森でヒトトビ草が群生しているのを見たという話をしていたのだ。
 最初は与太話だと思って適当に聞き流していたが、その旅人が懐からヒトトビ草の花弁を数枚取り出したのでとりあえず信じる事にした。
 まあ、その花弁が本当にその群生していたという場所から取ってきたものとは限らないが、もしそうならあたしの研究は一気に進展する。
 もし嘘だったとしてもそれはそれで笑い話くらいにはなる。
 そう考えたあたしは噂の真相を確かめる為に森に入ったのだ。
 一人で行ったのは、大抵の困難は魔法で乗り切れる自信があったからだ。

 気がつけばあたりはすっかり暗くなっていた。
 おかしい。この森はそんなに大きな森ではなかったはずだ。
 端から端まで抜けるのに3時間ほどしかかからないはず。
 ……迷ったという事だろうか。
 どうしよう。日帰りできる距離だから、食料もあまり持っていないし、当然野宿の準備なんてしていない。
 ふと足元を見ると、白骨化した人の頭骨が転がっていた。大きさからして男性の物だろうか。
 よく見ると周囲には無数の骨が散乱していた。
 ……あたしも、この仲間に入ってしまうのだろうか。
 そう思ったとき、ふと甘い香りが漂っているのを感じた。
 なんだろうか。
 あたしは香りの元だと思われる方向へ歩いていった。

 そこには、辺り一面にヒトトビ草が咲き乱れていた。
「本当に、あったぁ!」
 思わず叫んでしまう。
 視界を埋め尽くす程たくさんのヒトトビ草。
 これだけあれば、あたしの実験もうまくいく。いや、この中のほんの一割程度でもいい。とにかく、いくつか摘み取らないと……。
 あたしは手近なところにあるヒトトビ草に手を伸ばして――何かに、右脚を引っ張られた。
「え?」
 一瞬であたしの身体が宙に浮いた。視界が反転し、逆さ吊りの状態になる。
 なにが起こったか全くわからなかった。
 困惑している間に状況はどんどん進展してく。
 今度は左腕が引っ張られる。
 さらに右腕、左脚も何か紐のようなものに引っ張られる。
 逆さ吊りの状態からは解放されたものの、あたしの身体は宙吊りの状態のままだ。
 なにに掴まっているのか判断しようとあたしは腕を見る。
 腕に絡んでいたのは、植物の蔦のような物だった。
 それほど太くはなく、体重がかかっているせいか、締め付けられているところがかなり痛い。
 ……よくあたしを吊り上げていられるなぁ。いやまあ、あたしは軽い方なんだけど。
 とか考えているうちに状況はさらに進展していく。
 いつの間にか先ほどより太い蔦が身体に巻きついていた。
「んっ……」
 蔦は身体中を締め付けてくる。全身が痛い。
「このっ……いい加減に……ひゃんっ!」
 魔法を使おうとしたとき、何かが服の下に入り込んできた。
 なんだかぬるぬるしていて、さわり心地は最悪。
 下を見ると、スカートの裾から一本の太い蔦が入り込んでいた。
 そして胸元から谷間を通って蔦の先端が飛び出してくる。
 その形は、まるで……その……男性の、象徴のような形をしていた。
 その時、あたしはこの植物の正体に気付いた。
 これは、夢百合草だ。
 この植物は人間を襲う性質を持っている。
 もし襲われた物が男性の場合、待っているのは死だ。
 白骨化するまで身体中から養分を吸われてしまうという。
 恐らく、先ほどの骨もこいつにやられた被害者なのだろう。
 だが、この植物の恐ろしさはそんなことではない。
 夢百合草の脅威は、女性が襲われた時だ。
 女性が襲われた場合、その女性が死ぬことはまずない。
 なぜなら夢百合草は人間の女性を媒介に繁殖するからだ。
 男性器にも似た独特な形状の触手を二本持っており、それらと無数の蔦を利用してまず獲物の動きを止めてから種付けを開始するという。
 ちょうど、今のあたしのように。
 やばい。
 ここから、逃げないと。
 だが、どれだけもがいても蔦が解けることはなく、むしろどんどんきつくなっていく。
 服の胸元から飛び出ていた触手が、少しずつあたしの口へと近づいてくる。
「い、いやっ……むぐっ!!」
 ほんの少しだけ口が開いた瞬間を狙ったかのように、太い触手が喉の奥まで入り込んでくる。
「ふふひひっ!ははへてほ!(苦しい!離れてよ!)」
 そんなあたしの叫びなど当然理解していないだろう。
 食い千切ろうとするが、触手は丈夫で歯が立たない。
 やがて触手から、なんだか甘い液体が分泌されてくる。
 まずい、これを飲んじゃうとまずい!
 のんじゃったら、のんじゃったら……どうなるんだっけ?
 なんだか知らないけど、とっても甘くておいしいじゃない。
 なんでこれ、飲んじゃ駄目なの?
 もっともっと、たくさん飲ませてほしいなぁ。

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 夢百合草が触手から分泌する蜜は、強力な催淫効果と回復効果がある。
 この蜜を味わってしまえば、まともな思考能力は完全に失われ、知能は低下し、快楽を求めることだけに執着するようになる。
 また、一時的な知能の低下があることも報告されている。
 つまり一度蜜を口にしてしまえば、どんな貞操観念の強い淑女も、学術に優れた才女も、エッチなことしか考えられない淫らな女性となってしまうのだ。

 そしてそこから何千回も性的な刺激を与えられるが、その間に獲物が疲れてしまうことはない。
 疲労を感じる前に回復させてしまうからだ。
 仮にこの時怪我をしていても、傷の再生すら行われるという。
 獲物は体力が尽きることも、身体が傷つくこともない。
 生き地獄、否、イキ地獄である。

 余談だが、この成分を抽出して作られた麻薬が魔法の国の裏社会では高値で取引されていることは有名な話である。
 回復効果のおかげで、この蜜だけを飲んでいても一生生きられるという。ただし常に発情しながら、だが。

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 あたしの気持ちを察してくれたのか、触手さんはたくさんの蜜を分泌してくれた。
 おいし〜い。
 なんかもう、痛いのとかどうでもよくなっちゃう。
 というか、なんか気持ちいい?
 痛いのがだんだん気持ちよくなってきたよ?
 じゃあ、いいか。
 痛いより、気持ちいいほうがいいじゃない。
 そんなことを考えている間にも蜜はどんどんどんどん出てくる。
 それをごくごくと飲むたびに、なんだか身体の感度が上がっていくみたい。
 飲めば飲むほど気持ちよくなっていく。
 だから、飲むのをやめられない。
 それにだんだんと……お○んこが、疼いてくるの。
 触手さん達が身体を愛撫してくれているけど、だんだん物足りなくなってきたの。
 いっそ、触手さんがあたしのお○んこに入ってくれればいいのに。
 お○んこのなかで、たくさん蜜を出してくれればいいのに。
 あたしのそんな考えは触手さんはお見通しだったようで、もう一本の触手さんがあたしのお○んこへ一気に進入してくる。
「ひゃぅ!」
 一瞬、お○んこから激しい痛みがやってきた。
 見ると、股の辺りを血が流れていた。
 あ、そうだった。
 あたしって、処女だっけ。
 でも、まあいいか。触手さんが初めてなら、それはそれでいいと思うよ。
 触手さんがあたしの膣内で動いている。
 あん、それ、気持ちいい、気持ちいいよぅ。
 触手さんや蔦の動きがどんどん激しくなっていく。
 ああ、気持ちいい、気持ちいいよう。
 おっぱいも、口も、腕も、脚も、お○んこも、全部気持ちいい!!
 やがて、触手さんの先っぽからまたたくさんの蜜が出てきた。
 白くて粘々した液体――まるで、話に聞くせーえきみたい。
 でもせーえきは苦いらしいから違うかな。これ、すごく甘いもん。
「ひゃぁ……あぁっ……あんっ……あああぁぁぁーーー!!!」
 上と下の口でそれを味わいながら、あたしはさらに快楽に溺れていった。

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 夢百合草の蜜が獲物の膣内に入ると、その獲物の肉体構造を変化させる。
 夢百合草が種を保つための手段――受粉の為の準備である。
 卵細胞の成長速度を速め、胎盤を形成し、卵細胞に無理矢理『受粉』させる。
 本来なら植物の花粉で人が妊娠することはありえない。
 だが夢百合草の蜜は、それを行えるように母体の構造を組み替えてしまうのだ。

 こうして性質を書き換えられた卵細胞は夢百合草の花粉と結合し、受精卵となる。
 そして人間の胎児と同じように育っていくのだ。

 夢百合草は獲物が受胎するまで、ひたすら密を与え続ける。
 自らの身体が細く、枯れ尽きるときまで。

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 触手さん、いなくなっちゃった。
 森の中であたし、ひとりぼっち。
 あたしにあるのは少し膨らんだお腹だけ。
 お腹に触れると、中で動いている気がした。

 あたしと、触手さんの子供だぁ。
 うれしいなぁ。一人じゃないんだもん。

 どうしようかなぁ。街に帰ってから産もうかなぁ。それともここで産もうかなぁ。
 なんかけんきゅーとかいろいろあった気がするけど、そんなのどーでもいいや。
 この子とずっとしあわせに暮らしてければ、それでいいよ。

 あ、でもこの草は持って帰らないと駄目だよね。なんに使うのか忘れたけど、これが目的だったんだから。

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 夢百合草が枯れ落ち、解放された母体はそのまま森の中で子供を出産することが多いという。(その理由は不明)
 その時産まれる子供は、頭に花の生えた、緑色の肌の亜人――ハナニンである。
 この魔法の国ではアルラウネの一種として扱われており、ちゃんとした手続きを踏めば人権まで保障されている種族の一つである。
 人間と結ばれれば、子供だって出来る。
 ハナニンは女性しかおらず、基本的にマザコンであり、多くの場合はレズビアンである。
 そして出産直後から母親の愛を求め、場合によってはひたすら性行為を行い続けることもあるという。
 大体この頃に蜜の催淫効果は切れ、母体は正気に戻るのだが、大抵は娘の行為を拒まず受け入れてしまう。

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―数年後

 あたしは街に戻り、ハナニンの子供を産んだ。
 正気に戻ったのはその頃だと思う。
 あたしはなんとか持ち帰ったヒトトビ草を使い、研究を完成させ、魔法使いとしてそれなりに有名になった。

「ままぁ、今日も、えっちなことしよー!」
 娘がそう言いながらあたしに抱きつく。
 すっかり成長した娘の大きな胸があたしの背中に押し付けられ、あたしはドキッとする。
「しゅ、宿題は済んだの?」
 冷静を装いあたしは娘に尋ねた。
「うん!もうぜんぶおわったー。だから、ごほうびちょうだい!」
「……もう、しょうがないなぁ」
 あたしは服を脱ぎ、娘とベッドに向かった。

 子供を産んで以来、あたしは男に興味がなくなった。
 あたしは娘を愛している。
 それは親子愛とかそういうものではなく、恋愛感情に近いものだと思う。
 あたしは娘が大好き。
 娘もあたしが大好き。
 だったら、何の問題もないよね?

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 以上が優秀な魔法使いにして、ハナニンの娘を溺愛する母親――オルナ・スティックの体験談である。

 なお、母の愛情をたっぷり受け取りすぎたハナニンは、母親の死と同時に破裂することがある。(たまに破裂しない個体もある)
 この時に大量の夢百合草の種子をばら撒くため、人里に住むハナニンは予め破裂予防の魔術をかけられることが義務付けられている。
 法整備が整う前には母体の死と共に処分されることもあった。(現在でも差別的扱いを受けるハナニンも多い)
 そのような扱いを受けながらも夢百合草は絶滅しないのは、街へ戻らず、愛欲に溺れている母親とハナニンが多いからだという。

 破裂しなかったハナニンは、人と同じように生き、死んでいく。
 その時は種子を放たない。歳をとることで種を残す機能が失われるからだ。

 夢百合草は人と結びつく。
 ただし、必ずしも種を残せるとは限らない。
 それでも人を母体として選ぶ理由はわかっていない。
 また、夢百合草という名前だがユリ科の植物ではなく、ハナニン科という独自の種である。
 名前の由来は「幻覚を見せながら、百合(レズ行為)を行うから」だという。

 魔法の国にはいろんな生物がいる。
 この夢百合草は特殊な生物ではあるが、魔法の国にはもっと不思議な生物がたくさんいる。
 が、それはまた別のお話。





復讐の願いのときに考えた設定を使ったものです。

こんな植物があったらいいなぁ。樹海とかに。
こう、通りかかったシスター(重要)が触手に絡まれて亜人産むの、いいとおもうんですがどうですか?

なお、この世界ではアルラウネはモンスターではなくそういう人種扱いです。
人魚も、ハーピーも。人間と共存できるかは別として。



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